IT業界以外の人はSESという言葉自体を耳にする事がほとんどないと思います。
ここでは、SES営業とはどんな仕事なのかについて説明していきます。
※2017年に書いた記事でもう4年も経ってるので、修正してみました(2021.5.21)
そもそもSESって何?
システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)とは、システムエンジニアが行うシステム開発等に関する、委託契約の一種(委任・準委任契約等)で、システムエンジニアの能力を契約の対象とするものである。
Wikiより引用
現時点では、請負と派遣の間ぐらいの契約の事だと思っておいてください。
派遣のようにお客さんからの指示を受けずに作業をするけど、責任は請負ほど重くないよ、というある意味ではいいとこ取りな契約です。
▼契約について詳しく知りたい方はこちらをどうぞ

SES営業とは
先ほど説明したSES契約を取ってくる仕事です。
派遣とは法律が違うだけで営業のやり方はかなり似通っています。
違いは登録者の派遣先を探すのではなく、自社の社員の案件を探すことです。
※自社に技術者が100人いたら、この100人の仕事を探すのが主な仕事になります。
ちなみに、自分が技術者になる訳ではないので、ITスキルはそれほど必要ではなく、基本的な用語を理解していれば問題ありません。
もちろん、詳しい方がより良いですが逆にあまり知らなくてもなんとかなります。
私もSES営業を始めた当時はJavaってお茶?というレベルでした。
SES営業の仕事内容
SES営業の仕事内容を業務の流れにそって説明していきます。
アポイント
SES営業としての最初の仕事は顧客へのテレアポから始まる事が多いです。
安心してもらいたいのはSES業界のアポはすごく簡単に取れるという事です。(ターゲットにもよりますが、取得率30%~60%ぐらいあります)
個人営業でアポイント率1~2%、法人の飛び込み営業でも同じぐらいと言われていますので、それに比べたら何十倍も簡単にアポが取れます。
現在IT業界は深刻な人手不足に陥っており、お客さんも常に技術者が足りなくて困っている状況が続いています。
コロナの影響でロースキル案件(テストや監視、ヘルプデスクなど)はかなり減っていますが、開発やインフラ構築の経験がある人材はまだまだ不足しています。
事務派遣であればスキルマッチも簡単ですし、大手企業には何万人も登録者がいるので人を集めやすいですが、IT技術者となるとスキル要件が高かったり、最近は社内で待機している技術者もいませんので、急に探しても見つからないのが現状です。
お客さんの視点から見れば、いざ人が必要になった時に声をかけられる会社がたくさんあった方がいい訳です。
そういった理由から、お客さんもパートナー企業(協力会社ともいう)に会う事に積極的な傾向があり、アポイントが取りやすいのです。
初回の訪問
アポイントが取れた企業へ訪問します。
初回訪問時には会社パンフレットなどを用いて自社の会社説明を行います
設立 昭和○○年○○月
資本金 ○○○○万円
社員数 ○○○名
拠点 東京・大阪・名古屋
技術者 ○○系○○名 ○○系○○名
事業内容 ○○○○
主にこのような内容を説明しますが、中でも、どんな事が出来る技術者が何人ぐらいいるかがお客さんの関心事です。
最初は先輩と同行すると思いますが、一人で行くようになったら、自社にどんな技術者がどれぐらいいるかとか、提案単価がどれぐらいだとか、今営業展開している技術者はどんな人かなどはきちんと把握していくようにしましょう。
また、派遣の免許があるのか、なければ今後取るのか、36協定はどれぐらいなのか、Pマークの有無や取得予定などの事も把握しておくと尚良いでしょう。
・派遣免許の有無と取得予定
・36協定の内容
・基本的な単価(PG単価○○万・SE単価○○万くらいは抑えておきたい)
・営業中の技術者の情報(稼働開始時期・人柄・スキル・並行状況など)
・技術者スキル分布
再訪
一度訪問したお客さんにはその後一か月に一度程度のペースで訪問し情報交換を行います。(案件の情報と技術者の情報を交換する)
案件情報の例
作業場所 新宿
作業内容 ○○企業向けポータルサイト開発
月額単価 70万
超過控除 140h-180h
募集人数 3名
期間 4月1日~9月30日
言語 Java
必須スキル Javaプログラム経験3年以上
尚可スキル Spring利用経験
用語を別にすれば、4月から3名、予算70万で人を探している、というのは何となく想像が出来るのではないかと思います。
※ちなみにJavaというのはプログラムの言語で(紅茶じゃありません)PGってのはプログラマーの事です。
訪問した際に営業展開している技術者がいればスキルシートを見てもらいましょう。
聞かれるのは雇用形態や稼働開始時期、単金、スキルなどが主になります。
SES営業と派遣営業で大きく違うのは訪問件数です。
他社のSES営業さんに聞いても、月の訪問数って40件~60件ぐらいのところが多いんですが、派遣会社の営業は、飛び込みだと一日の訪問ノルマが50社の所とか結構あります。
「一か月50社」と「一日50社」じゃかなり違いますよね。
※最近は打ち合わせもオンラインなので、もう少し打ち合わせ件数が増えてるかもしれません。また派遣も飛び込み営業なんてしてるところはもう見かけませんね笑
商品
言い方は良くありませんが、SES営業が扱う商品は自社の技術者になります。
先ほどの案件情報に期間の項目がありましたが、各プロジェクトには終わりの時期があります。
現場から技術者が上がってくると分かったら次の案件を探して営業を開始します。
ちなみに、自社の技術者が100人いるとして、全員稼働していたら何をすると思いますか?
個人営業出身の私には想像もつきませんでしたが、売るものがないので、特にやる事がありません。(あくまで極論ですが)
案件が決まらず社内に技術者を待機させてると怒られますが、それ以外できついノルマはあまりないところも多いです。
※中には他社の技術者だけで営業してこいというブローカー的な企業もありますが、あまりいい会社とは言えないと思います。今後は商流制限が厳しくなると考えられますので経営が行き詰まる可能性もあるでしょう。
※この記事を書いた4年前にしていた想像は外れました笑
プロパーがいなければどんどんBP(よその会社のエンジニア)を決めろという会社は減っていません、残念ながら。
提案
もらった案件にマッチする技術者がいれば提案を行います。
年齢:30歳
性別:男
稼働時期:○月○日~
金額:月額○○万
スキル:Windowsサーバ設計・構築
最寄駅:○○駅
並行状況:面談設定1件
このような情報と一緒にスキルシート(経歴書)を添付しメールで送ります。
見積もりなどはなく、この人は月額○○万という様に事前に社内で決まっていますので、自社のルールに従って金額を提示すれば問題ありません。
面談
提案した技術者に面談の依頼が入れば日時を調整し同行します。
面談の流れは、顧客から業務内容の説明を受け、次に技術者本人が経歴の説明をします。
その後、質疑応答があり面談終了となります。
面談終了後は技術者を離席か帰社又は帰宅させ、顧客と営業間で単価の確認やいつ結果が出るか、並行状況などについて打ち合わせを行います。
契約
面談に合格し、諸条件がクリアになれば契約締結に進みます。
今までに取引がない企業であれば、まずは基本契約を結びます。
法務チェックが必要になりますので、営業としては橋渡し的な役割が中心となります。決定から入場まで時間が無い場合も多いので、迅速な対応を心がけましょう。
その後、個別契約(派遣契約の場合は派遣個別契約書、準委任の場合は見積もり→注文書→注文請書の流れが一般的です)の取り交わしを行います。
個別契約については事務担当が処理してくれる場合も多いと思いますが、勉強の為にも可能なら極力自分で対応させてもらうようにしましょう。
技術者のフォロー
技術者の悩みのヒアリングを行います。内容はセクハラ、パワハラなどの人間関係の問題や、残業が多くて辛いなど職場環境に関する事、お給料などの待遇面についてなど多岐に渡ります。
また、キャリアパスを一緒に考えることも重要な役割です。
※ここ数年(今は2021年)は異常な程売り手市場(エンジニアが居ない状況)が続いていた為、技術者フォローを重視している会社がとても増えています。
SES営業の魅力
アポイントも取りやすく、競合はあっても合い見積もりなどの価格競争がないなど、法人営業の中では難易度がかなり低く、未経験からのステップアップには最適です。
営業の基礎を学んだり、技術者フォローなどからコミュニケーション能力を高める事も可能でしょう。
またかなりの数のお客さんと知り合う事が出来、一年も経てば軽く100人以上の人と名刺交換をする事になると思います。
問題としては、何となくやっていても結果が出てしまう為、評価に差が付きにくかったり、レベルアップしようと思ったら常に意識を高く持つ事が必要になってきます。
人を扱う為、その分トラブルも増えますが、最後は人間力が物を言う事も多く人としての成長も期待できると思っています。
最後に
この記事を読んでくれたという事は最近SES営業になったとか、これからやろうと思っている人が多いのではないかと思いますが、なんとなくどんな仕事なのかイメージをつかんでもらえたのではないかと思います。
この記事ではあまり触れていないのですが、SES営業の中には自社のプロパーが入ってない案件にパートナーの技術者だけを売ってこい、という会社が結構あります。
業界では回しとか商流会社などと呼ばれる事が多いですが、もしあなたのいる会社がそうなのであれば早めに転職を考えた方がいいでしょう。
大体において技術者の採用が出来ていないか、離職率が高い(=問題のある会社)の場合が多く、今後伸びていく可能性は限りなく低いと私は思います。
プロパーを決めるより難易度がかなり高くなるので、出来たら出来たですごい事ではあります。
※ちなみに、自社で体制を組んでいる案件で増員があって、協力会社さんから人を出してもらいたい、という場合は悪いどころか逆に良い会社です
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